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育児というのは、じゃじゃ馬を飼い慣らすようなもの(2)

西山桂(教育学部)

《娘と二人だけの時間》

 土曜日の午前中は、娘と二人きりで過ごすのが習慣になった。娘を車に乗せ、乃白町にある松江市の施設「子育て支援センター」に連れて行く。ここには「あいあい」という遊び場所があって、板張りの床が印象的な室内は広々としている。幅広い年齢の子どもに対応したおもちゃやクッション製のジャングルジムまである。

 初めて「あいあい」にやってきたのは、娘がハイハイを始めたころだった。一人で這いずり回り、やがては疲れて眠るのを期待していた。しかしそれは甘かった。遊ばせようと床に離した途端に、火が付いたかのように泣き叫ぶ。抱っこしてやると一応は泣き止むのだが、またハイハイをさせようとすると号泣が始まる。どうも、慣れていない場所で、しかも周囲にたくさん子どもがいる環境で一人にされるのが怖いようだ。

《獅子の子落とし》

 「あいあい」は広い。板張りの部屋の総面積が2部屋合わせて約370平方メートルという。これは島根大学ホールの客席スペースの広さ(約500平方メートル)の7割以上だから、「あいあい」の1部屋だけでもちょっとした体育館のようだ。

 その部屋の端っこの床に娘を置いてみる。当然ながら、泣き叫ぶ。私は部屋の反対の隅に走っていく。大泣きしながら、ハイハイで一歩一歩、娘が私の方に近づいてくる。時には、周囲の保護者から「がんばれ!」という声援も飛ぶ。

 何とも手荒な「訓練」かもしれない。初めて行ったときには「あいあい」に入ってから1時間くらい泣きっぱなしだった。だだし、それでも泣き疲れることはなかった。2回目に行ったときには20分で泣き止んだ。3回目には、5分に短縮された。そうやって、新しい環境にもだんだんと慣れていった。おかげで、「あいあい」というのは娘が最初期に覚えた言葉のうちのひとつになった。

《娘との逃避行》

 娘を「あいあい」に連れて行き二人だけの時間を過ごすようになったのは、もともと切実な理由があった。妻が育児から離れて一人になる時間を作るためだ。妻はその間に歯医者さんで診てもらったり、美容室に行ったりすることができる。自宅でも、「じゃじゃ馬がいない間に」集中して物事を進めることができる。

 赤ちゃん連れの父親が、たとえ数時間でも周囲に気兼ねなく過ごせる場所を探すのは難しい。始めは大学の研究室に連れてきたりもした。慣れない場所なので泣き出すようになると、週末とはいえ、周囲の迷惑になる。学内でオムツを交換するのも大変だ。

 そうやって父娘二人であてもなく市内を徘徊していたころ、ちょうど口コミで「あいあい」のことを聞いた。実際に利用してみると、さすがに幼児向けに整えられた設備でもあるし、子どもが勝手にさわって危険なものというのがほとんどなく安心できる。オムツを替える設備もある。ミルクを作るお湯ももらえる。子連れでトイレに入っても大丈夫だ。

《ほしかったものは、実はすぐ近くにある》

 赤ちゃんを連れて市内へ出るとき、どこが便利か。これは、いままで気づかなかった視点だ。当事者になって初めてわかることというのはたくさんある。例えば私も就職してすぐのころ、車を日常的に運転するようになって初めて「市内には実はたくさんガソリンスタンドがあること」を知った。このときのように新鮮な「発見」を思い出した。

 あるいは、島根大学に赴任当初は状況がよくわからなかったが、共同利用の実験設備が結構充実していることに徐々に気づいてきた(欲をいうと、物質がピカピカ光っている様子を詳しく測定する装置がもっとあればうれしい!?)。本質的なことは目に見えないというけれど、まさにその通りだ。

 そういう目で世の中を眺めてみよう。市内の公共機関はもとより、主立った商業施設にもたいていは多目的トイレが設置されていて、オムツ替えにも使える。スーパーに行っても、買い物の間はベビーカーを借りることができる。確かに娘がやってくる前にも、大きなものを買うときなど買い物カートくらいは使っていた。車イスでも使用できるような、多目的トイレの存在は以前から知識としてはあった。しかし、実は店舗の入口には貸出用のベビーカーがたくさんあることや、多目的トイレには簡易ベビーベッドが設置されていてオムツ替えにも使えることには気づいていなかった。

 もちろん私たちも、世の中の便利さに甘えようというわけではまったくない。しかし、社会は想像以上によく考えて設計されている。もう少し万物をよく見て、耳をすませば、また別の発見があるに違いない。

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